2020.11.09

【イベントレポート】Salesforceで実現する「ローコード開発」とは?-TerraSkyDays 2020 Online

はじめに

「DX先進企業と変革のリーダーが語る2日間」をテーマに、2020年10月20日(火)と21日(水)の2日間で開催した「TerraSkyDays 2020 Online」。2017年からスタートして5回目となる今回は、オンラインでの開催という初の試みでした。2日間で述べ6時間10分という長丁場も初めてでしたが、「2日間を通してストーリー性があり、わかりやすかった」「オンラインで手軽にさまざまな講演を聴くことができてとても便利」など、ご好評をいただきました。
本稿では、「ITシステム内製化の鍵を握る『ローコード開発』とは」をテーマに、株式会社セールスフォース・ドットコム 川畑隆博氏、湯田大貴氏にご登壇いただいたセッションの内容をご紹介します。

まずは、ローコード開発が注目される背景などについて、湯田氏にお話いただきました。

なぜ今ローコード開発が注目されるのか

今年発生した新型コロナウイルスによる衛生危機や、新型コロナウイルスに端を発する経済危機など、私たちを取り巻く環境は予測不可能な状況にあります。

「このような中、DX(※)はもはや理想論ではなく、今まさに対応しなければならない現実の問題として私たちに迫っているのではないでしょうか」と問題提起する湯田氏。
DXによる業務変革を推進するには新しい業務アプリケーションが必要になりますが、その業務アプリケーションの構築手法としてローコード開発に注目が集まっています。

※Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)

従来の業務アプリケーションの開発方法については、以下のような問題がありました。
・SIerなどに外注した場合…個別に開発することで自社の複雑な要件を満たすことができるが、要件定義に時間を要し、コストもかかる
・SaaSを利用した場合…短期的には問題を解決することができるが、長期的に見るとカスタマイズができないため、新たな問題が発生したときに対応できない

このような問題に対し、ローコード開発は有効であると湯田氏は語ります。
「このニューノーマル時代において求められるのは、現在の問題を即座に解決できることや、将来の問題に関して対応できる柔軟性です。そしてまさに、この2点においてローコード開発が求められているわけです。
ローコード開発を利用することで、ゼロからコードを書く必要がなくなりスピーディーな開発を行なうことができます。そして、業務アプリを内製化できるようになるため、将来問題が発生しても柔軟に対応することができるようになるわけです」(湯田氏)

セールスフォースが提供するローコード開発ツール

セールスフォースは、「Salesforce Customer 360」という開発プラットフォームをベースに、さまざまなソリューションを提供しています。モバイル・ブロックチェーン ・AI といった要素技術に加え、ローコードに関する技術も備えています。
その中でも、代表的なローコード開発ツールは以下の2つです。
・Lightningアプリケーションビルダー…業務アプリを作成できるツール
・Lightningエクスペリエンスビルダー… 顧客向けのWebサイトやポータルサイトを作成できるツール

また、「Lightningフロービルダー」を利用すれば、ブロックを矢印でつないでプロセスの自動化やロジックの構築ができます。
さらにSalesforce プラットフォームは、基本コンポーネントを基に、業務に合わせてカスタムコンポーネントを開発することが可能です。

57%のスピードアップ、事業部門の機能開発が6倍増

このように、さまざまな開発ができるSalesforceのプラットフォーム。Salesforceでローコード開発を行なうメリットは、数字にも表れています。
IDC 社の調査によると Salesforceの採用によりアプリ開発のスピードが57%も向上したということです。
また、事業部門が開発した機能はおよそ6倍に増えたというデータもあるため、Salesforceは「だれでも開発に参加できるプラットフォーム」であると言えそうです。

「Salesforce プラットフォームではノーコード・ローコードによる開発からコーディングによる開発まで、多様な開発手法を選べます。そのため、発生した問題の複雑性や社内のリソースに合わせて、最適な開発手法を選ぶことができるのです。
また、今までは情報システム部門が一気に引き受けていた開発業務が分散されることで、より現場目線でアプリケーションを構築することができます。結果として、アプリ開発にスピードと柔軟性が生まれ、ニューノーマル時代に対応したDXを実現できるのです」(湯田氏)

開発不要でSalesforceを使いやすくできるSkyVisualEditor

Salesforceに関するアプリケーションのマーケット「AppExchange」では、4,000を超えるアプリケーションが配布されています。アプリケーションは、サブスクリプションのため巨額な初期投資は不要で、 Salesforceとのシステム連携に頭を悩ませる必要もありません。

このアプリケーションの中から、テラスカイが提供する「SkyVisualEditor」について、湯田氏にお話いただきました。
「SkyVisualEditorは、世界55万人以上のユーザーに利用されており 、Salesforceの画面開発のデファクトスタンダードとも言える製品です。このSkyVisualEditorもローコードのツールであり、Salesforceの画面をさらに拡張することができます。
具体的には、業務フローを表示する画面や、Salesforceが従来苦手としていた『帳票作成』『複数レコードの一括登録』などの機能を備えた画面を開発することが可能です」(湯田氏)

このように、ローコード開発を進めるために欠かせないSalesforceと、画面開発ができるSkyVisualEditor。
続いて、この2つのツールを利用して、川畑氏にデモンストレーションをしていただきました。

ローコード開発のデモンストレーション(見積書の表示)

ローコード開発を活用して、自動車販売会社が見積もり機能を追加するケースを想定してみましょう。
Salesforceの画面は、それぞれコンポーネントと呼ばれる部品の組み合わせによってできています。次の画面では、左側に標準と呼ばれるコンポーネントが並んでいます。
また、「パス」という標準コンポーネントを使用すれば、画面上部に「購入」「製造」「配送」といったステータスを追加することが可能です。

次に、見積もりロジックの実行には「フロー」というコンポーネントを使います。
次の画面では、レコードを更新したらどんな画面を表示するかという処理フローを書いています。

このポイントは、さらに小さく分けて考えることもできます。このフローの中身は、見積もり計算のロジックそのものです。

「先ほどの画面フローも含めて、コーディングだけで作っていくと開発も大変ですしテストも必要になってきます。このように思考を可視化するだけでも、イメージしやすいのではないでしょうか。
ここまでコードは1行も書いていないのですが、ただコードを書かないことを目的としてはいけません。開発者と協力して、ユーザーにとって価値の高いところはコーディングするという選択肢を持てることが重要だと思っています」(川畑氏)

機能はほとんどできあがりましたが、最後にユーザーの使いやすさを向上させるコンポーネントを追加してみます。
すると、次の画面のように右側の車の写真上部にあるタブや、写真下部にある色をクリックするだけで、車種や色を変えられるようになりました。さらに、画面右側上部にある「クイック見積もり」をクリックすると、車種や色に合わせた見積もり価格も取得できます。

ここまで順調に見えますが、Salesforceの弱点と言える帳票は用意されていません。AppExchange のアプリを使えば、帳票もすぐ作ることができます。
たとえば、次の画面のようにSkyVisualEditorを使って見積書を呼び出すことが可能です。

最後に、川畑氏は以下の言葉で、デモンストレーションを締めくくりました。
「今日ご紹介した機能をゼロから開発するとなると、まずユーザー管理から始まりデータのアクセス制御なども含めると開発に半年はかかると予想されます。
Salesforceを利用すれば、ユーザーと同じ視点で業務とデータを中心に対話しながら開発できるので、スピードも早く柔軟性も高いことがおわかりいただけるかと思います」(川畑氏)

ローコード開発を進めるうえでのポイント

デモンストレーションの後、ナビゲーターであるテラスカイ 松岡と湯田氏、川畑氏にて質疑応答を行ない、セッションは終了しました。

<質問1>
ITシステムの内製化において重要なポイントは、どのような点でしょうか。(松岡)

スピードと柔軟性というところで、事業部門のユーザーと開発者が同じプラットフォームで会話しながら開発できることだと思います。ビジネス上の業務課題というのを設計書ベースで落とし込むというところも必要だと思いますが、企業の中にはいろいろなレベルの開発者がいるので、コードが書ける人も書けない人も同じツールを使ってより迅速に開発できることが重要であると考えられます。(川畑氏)


<質問2>
ITシステムの内製化を進めるにあたり、最初の一歩としてどのようなことから始めていくのがよろしいでしょうか。(松岡)

まずは、Lightning Platformでデータをオブジェクトという形で取り込んでいただくのが初めの一歩になるかと思います。なぜかといえば、自動化を妨げる一番の問題というのはスプレッドシートや手作業で入力されるデータだと考えられるからです。スプレッドシートからデータをSalesforceに移して管理できれば、よりデータの価値が高まると思います。(川畑氏)


<質問3>
アプリケーションを開発するうえでカバーしていない業務要件が出てきた場合、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。(松岡)

まずは、なるべく開発やコーディングをせずに、Salesforceの標準機能だけでカバーできるかどうかをしっかり検討することが大切だと思います。Salesforceは標準機能でも相当のことができますし、またAppExchangeを使うこともできます。
日本企業の場合、入力画面にこだわるケースが非常に多いのですが、Salesforceの入力画面を使いやすくするためにはSkyVisualEditorを利用するとよいでしょう。(湯田氏)
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