2020.11.26

【イベントレポート】Keynote Day2:ニューノーマルにおける新しい顧客体験とは-TerraSkyDays 2020 Online

「DX先進企業と変革のリーダーが語る2日間」をテーマに、2020年10月20日(火)と21日(水)の2日間で開催した「TerraSkyDays 2020 Online」。2017年からスタートして5回目となる今回は、オンラインでの開催という初の試みでした。2日間で述べ6時間10分という長丁場も初めてでしたが、「2日間を通してストーリー性があり、わかりやすかった」「オンラインで手軽にさまざまな講演を聴くことができてとても便利」など、ご好評をいただきました。
時代とともに顧客の嗜好は変化し、それに伴ってビジネスも「大量少品種のモノ作り」から「少量多品種のコト作り」へと移り変わってきました。そして近年は、顧客一人ひとりの要望に合わせたオンデマンド型のパーソナライズ化された商品・サービスを通じて、感動できる“体験”を提供することが求められてきています。

テラスカイがコンセプトとしている「DX Ready」においては、そのように一連の流れで顧客が体験すること、すなわちカスタマーエクスペリエンス(CX)を重視することは、1つの大きなテーマでもあります。また、顧客体験を作り出していくための新たなビジネスを創出するには、その市場や周辺領域の事情を知る適切なパートナーとの「共創」、いわゆるオープンイノベーションの取り組みも欠かせません。

モデレーターを務めた株式会社テラスカイ 取締役執行役員 副社長 宮田 隆司

「TerraSkyDays 2020 Online」2日目のキーノートセッションでは、DXを推進して新たな時代に顧客に受け入れられるために、「CX」や「共創」の観点からどのように事業を進めていくべきなのか、登壇した3社がそのヒントを示しました。

消費者のコーヒー体験を通じて購買を促進させる

最初の登壇者はUCC上島珈琲でデジタルマーケティングを担当する染谷氏。同社は缶コーヒーや豆・粉コーヒー商品の製造・販売をはじめ、カフェの運営、農園の経営など、主にBtoCの領域でコーヒーに関わる幅広い事業を手がけています。そのなかで、まさに「CX」の視点から実店舗とオンラインを交えて展開しているのが「My COFFEE STYLE」というプロジェクトです。

My COFFEE STYLEでは、都内に3店舗ある「COFFEE STYLE UCC」や公式ECサイトにおける商品販売の活性化を狙い、消費者とのオンラインでのコミュニケーションを通じた戦略を行っています。その代表的な取り組みの1つが、メッセージアプリのLINEを活用したOMO(Online Merges with Offline)です。
実店舗では、スイーツなどとの食べ合わせを考慮したコーヒー豆・粉を提案、販売しており、来店客はそれらの中から自分の嗜好にマッチするさまざまな種類のコーヒー商品を選べるようになっています。同社はこのコーヒー商品の販売促進を狙い、来店客に対してLINEの友だち登録を促したうえで、LINE上で「味覚診断」というコンテンツを配信。ユーザーがチャット形式でいくつかの質問に答えていくことで、自身の味覚の傾向がわかり、それに合うコーヒー商品を教えてくれる仕組みを作り上げています。

UCC上島珈琲株式会社 マーケティング本部 デジタル推進部部長 染谷清史氏

LINE上ではさらに「My COFFEE マップ」というヒートマップ風の画面も用意されており、味覚診断で得られた味覚傾向や、実際に購入して味わったコーヒーの感想を入力していくことで、自身の好きなコーヒーのタイプがより明確になり、「過去にどんなコーヒーを飲んでいるか、次はどんなコーヒーがおすすめか」がわかるようにもなっています。

こうした仕組みから得られたデータを活用して、同社では「My COFFEEお届け便」というサブスクリプションサービスを展開しています。定額料金を支払うことで消費者の好みに合うタイプのコーヒー豆・粉が毎月届くというもので、単純にすべての消費者に一律同じ商品を提供するのではなく、パーソナライズ化された商品を提供することで顧客満足度を高めているのが特徴です。

また、データを分析することで、消費者の傾向やその変化も捉えられるようになったと染谷氏は話します。たとえば年代ごとのコーヒーを飲用するタイミングを把握できるようになり、「高齢になるほど朝に飲用する率が高い」ことなどが判明したと言います。

「一般的には選びづらいと思われているコーヒーの世界で、誰でも楽しんでコーヒーを選べるようにする」のがMy COFFEE STYLEのコアコンセプトだと話す同氏。そのコアコンセプトを強化していくために、今後もさらに積極的にデータを活用して、顧客とのOne to Oneのコミュケーションを拡充していきたいと語りました。

IoT、AI、データを活用してサービスの拡充を図る

モノ・コトづくりから体験の提供へとシフトし、「CX」を体現しようとしているのは、歴史の長い製造業、BtoBビジネスも例外ではありません。

続いて登壇したのは、東芝三菱電機産業システム サービス事業推進室室長の阿部氏。同社は工場などで使われる大型機器の製造・販売事業を行っていますが、これまで好調に推移してきた同事業も、アジア各国の台頭によって「モノを売るだけではいずれ立ち行かなくなる」という危機的な状況にあることを説明。「新たな価値を生み出す“サービス事業”の高度化を実現する必要性に迫られた」と語ります。
そこで、事業の変革を目指し2019年に発足したサービス事業推進室では、3つの目標を設定したと言います。1つ目は、エンジニアによる機器メンテナンスを中心とする「フィールドサービスにおける対応力の向上」。欧米の競合他社はすでにこのフィールドサービスにIoTやAIの技術を取り入れており、同社としては後を追う形となりますが、「診断機能やIoT技術を組み込んだ機器を納め、そこで蓄積したデータを活用することで、新たなフィールドサービスにつなげる」考えです。

2つ目は「サービス事業のプラットフォーム化」。主に機器のトラブル対応において、属人化を排した仕組みを作り上げることを目指しており、「データベースを構築、活用することで属人化を排し、誰もがトラブル対応できるようなプラットフォームを形成する必要がある」と話します。

最後の3つ目は「サービスソリューションの開発によるロイヤルカスタマー化」。AIなどを活用した解析技術も導入することで、納入した製品が自ら状態を把握、発信し、故障などの予知・予防や安全性の向上につなげるソリューションの開発を進め、それを通じて顧客満足度を高めていきたいとしています。

東芝三菱電機産業システム株式会社 経営企画本部 サービス事業推進室室長 阿部誠氏

しかしながら、同社が取り扱う機器は多岐に渡り、一度にすべての機器についてサービス拡充を図ることは困難です。そのため、まずはスモールスタートで取り組み、順次対応できる機器を拡大していく方針を打ち出しました。それに必要な管理システムとして選択したのが、取扱製品ごとに個別開発が最小限に抑えられる柔軟性をもち、アジャイル開発にも対応できるSalesforceだったとのこと。

さらに、Salesforceが標準機能としてもつフィールドサービス管理ソリューション「Field Service Lightning」を熟知し、スモールスタートの新しいチャレンジに柔軟に対応できるうえに、長期的な共働が可能という条件から、テラスカイをパートナーとして選んだことも明かしました。阿部氏は「ただモノを作るだけではコモディティ化に埋もれてしまう」とあらためて危機感を募らせながらも、「Salesforceを活用しながらサービス事業を高度化させ、そこに活路を見出していきたい」とモチベーションを高めていました。

サブスクリプションで新たな体験価値を提供するモビリティサービスに

セッション最後の登壇者は、クルマのサブスクリプションサービスという新たなビジネスモデルにチャレンジしているKINTO副社長の本條氏。同氏はKINTOについて紹介するとともに、クルマの周辺領域で事業を展開しているあらゆる企業との「共創」を通じ、魅力的なサービスを提供していく将来像について語りました。
今やオンラインサービスのあらゆる分野で、定額料金で使い放題となるサブスクリプションサービスが広がっています。動画や音楽、ソフトウェアなど、実に多くのコンテンツが「所有」から「利用」へとシフトしている状況です。最初に登壇したUCC上島珈琲も「My COFFEEお届け便」をサブスクリプションで提供していました。

そうした流れのなかで、KINTOの母体であるトヨタ自動車が、2018年に「自動車をつくる会社からモビリティカンパニーへ」という基本方針を打ち出したことが、KINTOというクルマのサブスクリプションサービスが誕生するきっかけになりました。トヨタやレクサスの計30車種以上のなかから好きな車種を、頭金なしで、毎月定額を支払うことで乗り続けることができる、というサービスです。

月額料金に含まれるのは車両の使用代金だけでなく、保険、税金などの諸費用も含まれており、別途必要になるのはガソリン代と駐車場代など。最初にディーラーで商談する必要はなく、Webから手軽に申し込めることも特徴の1つとなっています。加えて、中途解約料金をあらかじめ明示しており、「期間ごとにやめやすいタイミングを設定している。免許返納、海外転勤など、お客様の事情で継続できない場合は中途解約を無料にしている」という点で一般的なリースとも差別化し、「始めやすく、やめやすい」こともポイントだそうです。

株式会社KINTO 副社長執行役員CSO 本條聡氏

保険料込みで割安でクルマが手に入り、乗り換えもしやすいということで、若年層のほか、ライフスタイルが変化しやすいファミリー層にも好評とのこと。2019年7月から全国展開をスタートして以来、約1年間で5000件以上の契約があり、最近の伸び率はさらに大きくなってきているとのこと。トヨタ車以外からの乗り換えも多く、さらにはWeb申込みの8割がスマートフォンからとのことで、従来のディーラーでの契約とは異なる層を開拓できているようです。

現在は契約期間中に1台の車に乗れる「KINTO ONE」と、複数台に乗れる「KINTO FLEX」の2つのサブスクリプションサービスを提供していますが、「KINTOを契約して楽しかった、カーライフが豊かになった、人生が豊かになった」という実感につながるような「旅行、キャンプ、デジタルコンテンツ、モータースポーツ、もしくは特別な1台をたまに借りられる」といった経験を作り出すサービス展開も検討していると言います。

「こういった領域は我々だけでは実現できない。ベンチャーの皆さんや大企業の皆さん、いろいろな方々と今一緒にサービスを作っているところ」と同氏。パートナーとの共創を積極的に進めながら、消費者の声も取り入れて商品・サービスを改善していく動きを一段と加速させていく方針を示しました。

DX Readyを実践し、DXを成功させる!

さて、2日にわたるKeynoteで「4つのDX Ready」について、ゲスト様の実践事例を交えてご紹介してきました。
具体的なアクションプランのイメージが描けたなど、皆さまのDXへのヒントとなれば幸いです。

テラスカイは、これからも皆さまのDXを支援してまいります!!

4つの”DX Ready”でDigital Transformationを実現する

23 件

関連する記事