2026.10.29

【イベントレポート】TerraSkyDay 2026:AI駆動開発BLADEと量子コンピュータの最前線

こんにちは!コーポレートコミュニケーション部のSです。

10月2日(金)にANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催された「TerraSkyDay 2026」。前回のイベントレポート記事では、Keynote、Product Keynoteについて紹介しました。

今回は、メイン会場であるSステージで開催された主要なセッションとともに、会場の様子についてレポートします。

現場エンジニアが語る、属人化と手戻りをなくす「AI駆動開発BLADE」の最前線

本セッションでは、AI駆動開発モデル「BLADE」について、テラスカイのエンジニア陣がユースケースを交えて紹介しました。

BLADEの概要

冒頭では、取締役 専務執行役員 クラウドインテグレーション統括本部 統括本部長 今岡が登壇。「開発プロジェクトの炎上」という長年の課題を根本から解決するために考案されたBLADEのコンセプトと、以下の主要なポイントについて解説しました。

●技術的負債の回避
単にAIへ大量のコードを生成させると、「アーキテクチャの崩壊」「ガバナ制限の無視」「ブラックボックス化」を引き起こします。BLADEではAIをコードの量産ツールではなく、設計や仕様作成における「品質向上の切り札」として位置付けています。

●ユーザーとの早期合意と手戻り防止
開発目的を示す「ユーザーストーリー」と合否判定基準である「受入条件」を事前に顧客と合意。その内容をもとにAIがテストケースを作成するため、認識相違や手戻りを防ぎます。

●トレーサビリティの確保
設計書・コード・テストケースを相互に追跡可能な状態に保ち、要件の抜け漏れや改修時のデグレード(品質低下)を防ぎます。

●開発品質の標準化
蓄積されたプロンプトライブラリを活用することで、エンジニアのスキルや経験に依存しない高品質なSalesforce開発を実現します。

大手製造業の要件定義におけるBLADE活用例

続いては、クラウドインテグレーション統括本部で部長を務める関野より、大手製造業のユースケースについて紹介。大量のデータを一括同期処理する高難易度なシステムの構築において、BLADEを活用した要件定義の進め方について説明しました。

●STEP 1(入力準備)
ヒアリングした業務内容や既存資料を、AIが解析しやすい形式(Markdown形式や箇条書き)に整理して入力。

●STEP 2(自動生成)
ユーザーストーリー、受入条件、データ構造図(ER図)をAIが瞬時に生成。

●STEP 3(レビュー・合意)
AIが出力した内容を人間(専門家)が1行ずつ論理的にチェック。顧客とのレビューを通じて要件を精緻化し、最終合意へ至る。

このアプローチにより、目的とテスト合格条件の明文化による「認識齟齬の防止」や、要件定義時点でAIがガバナ制限リスクを予見する「エラーの事前回避」につながりました。また、会議中に顧客から「特定の開発を行った場合の影響範囲やコスト」を問われた際も、AIを活用してその場で即座に回答できたことで、「判断材料がすぐに得られて非常に助かる」と高い評価を得たエピソードも紹介されました。

セッションの最後には、今岡よりBLADEで培われた高度な開発ノウハウや知見をお客様の開発環境で活用できるAI駆動開発支援プラットフォーム「BLADE SAYA」の告知が行われ、本セッションは幕を閉じました。

量子コンピュータ活用の最前線 〜ビジネス実用化への加速〜

量子技術を牽引する3社が登壇した本セッションでは、量子コンピュータの基礎知識から実践的な取り組みまで、多角的に語られました。

量子コンピュータの基礎知識とQuemixの取り組み

冒頭では、株式会社Quemix 中土井より、量子コンピュータの基礎知識や同社の取り組みについて説明がありました。

私たちが日常的に使用している既存の「古典コンピュータ」は、計算量の増加に伴い処理時間が膨大になります。一方、量子コンピュータは計算量が増大しても処理時間を飛躍的に短縮できるという決定的な強みを持ちます。

特に「材料計算(新材料や薬品の開発)」や「CAE計算(製品設計のシミュレーション)」などの領域で大きなイノベーションが期待されており、同社が提供する量子計算プラットフォーム「Quloud」が産業界での活用を後押ししている現状が語られました。

クオンティニュアム社が描くロードマップと日本での展開

続いて、クオンティニュアム株式会社 ディレクター事業開発・営業本部長の戸田詩門氏が登壇。同社のグローバル戦略や国内での取り組みについて解説しました。

米国発の同社は2019年に日本市場へ参入し、ハードウェア・ミドルウェアからソフトウェアまでを一貫して手掛けており、Quemixとは足掛け2年のパートナーシップ取組みを進めています。セッションでは、今後の商用化に向けたロードマップが提示されました。

・2025年: 98量子ビットの商用量子コンピュータ「HELIOS」の提供を開始
・2029年: エラー率を大幅に低減し、実ビジネスへ本格適用可能な数千量子ビット機「APOLLO」をリリース予定

日本国内においては、理化学研究所(埼玉県和光市)に同社の量子コンピュータ「黎明」を設置。スーパーコンピュータ「富岳」と連携させることで、科学素材のシミュレーションや創薬向けアプリケーションの開発を進めています。また、世界各国の政府機関や主要産業のリーディングカンパニーと提携し、量子エコシステムの拡大を進めていることが紹介されました。

日産自動車様:モビリティ領域における量子コンピュータの適用事例

次に、日産自動車株式会社 総合研究所 先端材料・要素技術研究所 主任研究員の内村允宣氏が登壇。「モビリティの知能化」に向けたデジタル技術の活用と、量子コンピュータを用いた最先端の研究開発について紹介しました。

同社では「モビリティの知能化」という長期ビジョンのもと、衝突解析や空力設計へのデジタル技術活用、マテリアルズ・インフォマティクス(AI等を活用した材料開発の効率化手法)による電池材料探索など、開発のスピードアップと試行錯誤の削減を図っています。

さらに、複雑化する計算負荷を克服するアプローチとして、量子コンピュータの適用に着手。流体計算の領域では、「量子・古典ハイブリッドアルゴリズム」を用いて従来のコンピュータと同等精度で空気の流れを再現することに成功しました。今後はさらなる高速化を図り、材料開発にとどまらず、配車サービスの最適化や車内環境制御といった幅広い領域への応用をめざしています。

最後は中土井より展示ブースを紹介。会場内のブースエリアに設置されたクオンティニュアム社の展示ブースは、多くの来場者でにぎわっていました。

SPECIAL SESSION:【異業種対談】「ドラゴンクエスト」シリーズ ゲームデザイナー堀井雄二× テラスカイ佐藤

TerraSkyDay 2026の最後を飾った本セッション。おなじみの「ドラゴンクエスト」のテーマソングとともに、堀井雄二氏がステージに登壇しました。

本セッションでは、国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズ誕生の裏話から、名作を支えるチームビルディング、生成AIなどの最新技術に対する考え方まで、貴重なエピソードが次々と飛び出しました。

漫画家を目指した青春時代から「ドラゴンクエスト」誕生まで

世界中で愛される作品を生み出してきた堀井氏ですが、その原点は「漫画」と「ライター」にありました。

高校3年生の時、アシスタントを志望し漫画家・永井豪氏のもとへ赴くも叶わず、一念発起して勉強を開始し早稲田大学へ進学。大学時代は漫画研究会に所属しながら、ライターとして活動を開始しました。そんな中、当時出会ったパソコン(PC-6001)に深く魅了され、プログラミング言語BASICを独学で習得し、「ポートピア連続殺人事件」などのアドベンチャーゲームを手掛けるようになった経緯が語られました。(ちなみに、永井豪氏と同じ日に旭日小綬章を授章するという、運命的なエピソードも紹介されました)

「ゲームオーバーのないゲーム」をつくりたい

「ポートピア連続殺人事件」の制作を通して「謎解きに行き詰まると終了してしまう」という課題を感じていた堀井氏は、アメリカのRPG『ウィザードリィ』と出会い、「レベルアップして強くなる楽しさ」を実感します。失敗すると100円が無駄になる当時のアーケードゲームに対し、「ファミコンなら失敗してもやり直せる『ゲームオーバーのないゲーム』を楽しんでもらえる」と着想。初心者でも迷わず進める丁寧な導線を設計し、誕生したのが『ドラゴンクエスト』第1作目でした。

ファミコンの制約と「ふっかつのじゅもん」

『ドラゴンクエスト』が誕生したファミコン初期はセーブ機能がなく、パスワードを使ってプレイデータを保存するシステムを採用。「ただのパスワードでは味気ない」という堀井氏のアイデアから「ふっかつのじゅもん」と命名され、プレイヤーにワクワク感を提供する工夫をこらしました。また、出身地である兵庫県淡路島の海・山・川に囲まれた豊かな自然体験が、広大な「ドラゴンクエスト」の世界観づくりに大きく生かされていると明かしました。

「プレイヤー目線」を貫く、堀井雄二のモノづくり哲学

たった1人でゲームを作っていた時代から、10人規模の『ドラゴンクエスト』を経て、現在は数百人規模のビッグプロジェクトへと成長した「ドラゴンクエスト」シリーズ。多人数を率いるリーダーとして、またクリエイターとして、堀井氏は以下の哲学を大切にしています。

●否定から入らず、代案を提示する
チームメンバーとの打ち合わせでは、相手のアイデアを絶対に最初から否定せず、一度受け入れたうえで「こうしてみたらどうかな?」と代案を提案するスタンスを徹底。ゲーム本編だけでなく、ショーやイベント、関連グッズの監修においてもこの姿勢を貫いているそうです。

●作り手目線に陥らず「ユーザーのリアルな心情」を想像する
ゲーム開発が進むと、作り手は「もっと楽しませたい」というサービス精神から機能や仕掛けをてんこ盛りにしてしまいがちです。しかし「作り手が楽しいと思うこと」と「ユーザーが本当に求めていること」は必ずしも一致しません。
近年増えている「長すぎるチュートリアル」を例に挙げ、「チュートリアルで最初からすべてを説明するのではなく、プレイしながら少しずつ覚えてもらう体験設計が大切」と語り、徹底したユーザー目線・バランス感覚の重要性を強調しました。

豪華クリエイター陣が集結した奇跡

「ドラゴンクエスト」といえば、鳥山明氏による魅力的なキャラクターデザインと、すぎやまこういち氏による壮大な音楽が欠かせません。この奇跡的なタッグが誕生した背景には、驚くべき縁があったと語ります。

鳥山明氏は、堀井氏が「週刊少年ジャンプ」でライターをしていた縁から、当時の名物編集者 鳥嶋和彦氏に相談したことがきっかけです。「作家に新しい刺激を与えたい」と考えていた鳥嶋氏の引き合わせにより、鳥山氏への依頼が実現しました。

すぎやまこういち氏は、 大のゲーム好きだった同氏がエニックス(現スクウェア・エニックス)に送ったアンケートハガキがきっかけです。ハガキを見たスタッフが「あの有名な作曲家のすぎやま先生では」と気づき、音楽制作のオファーへとつながりました。

最新テクノロジー「AI」へのアプローチと今後の展望

新しいモノ好きを自認する堀井氏は、最新テクノロジーである「AI」の活用にも意欲的です。
「ドラゴンクエストX」の冒険の相棒「おしゃべりスラミィ」のバックエンドには、生成AI「Google Gemini」を搭載。プレイヤーごとの冒険の記録を記憶し、状況に応じた適切なアドバイスを返してくれるという先進的な取り組みを行っています。

50周年に向けた未来と、新たな挑戦

堀井氏は、「当初は10年も続くと思っていなかった「ドラゴンクエスト」が、40周年を迎えた。皆さんの要望に応えながら、50周年に向けて頑張ってつくり続けたい」と力強く語ります。

さらに、今後のユニークな構想として「勇者の墓」というアイデアを披露。自身が生きた記録をデジタル化し、いつでもアクセスできるようにするという未来的な構想について、説明しました。

現在、「ドラゴンクエスト」のメイン層である40代〜50代に加え、その子ども世代である若いプレイヤー層も着実に増えています。世代を超えて愛される背景にあるのは、堀井氏の姿勢です。堀井氏は賑やかな場所を好み、ゲームショウにも一般客として参加して、現場の空気感やユーザーの生の熱量を直接感じ取ることを大切にしています。

セッションの最後には、12月3日(木)発売予定の新作タイトル『ドラゴンクエストモンスターズ4 枯れ木の国のビアンカ・フローラ』について告知され、セッションは大盛況のうちに終了しました。

会場の様子

ご紹介したメイン会場の他にも、4つのBreakout Session会場で20のセッションが行われ、多くの来場者が学びを深めた1日となりました。
また、開催当日はセッションの他にも、さまざまな企画をご用意しました。

会場オープン後すぐにご来場いただいた方に向けた「早期来場特典」。
ミニパンとコーヒーの朝食サービスに加え、キービジュアルをモチーフにしたオリジナルハンカチをプレゼントしました。

ブースを巡ってスタンプを集め、抽選にチャレンジする「スタンプラリー」。
オリジナルバスソルトやマッサージ機など「回復アイテム」をご用意し、多くの方に楽しんでいただきました。

コーヒーを片手に休憩ができる「リフレッシュベース」。
ワークスペースでセッションの合間にちょっとした仕事をしたり、コーヒーやお菓子でほっと一息ついたりと、思い思いに過ごしていただけたようです。

おわりに

改めまして、TerraSkyDay 2026にご参加いただき、誠にありがとうございました。ご来場いただいたみなさまには、本イベントを通じて、AIや量子コンピュータの最新動向への理解が深まり、その革新的な可能性をより身近に感じていただけたのであれば幸いです。

次回のTerraSkyDayで、みなさまと再びお会いできることを楽しみにしております。
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