2020.10.29

【イベントレポート】脱ハンコで注目される「電子契約」によって契約業務はどう変わる?-TerraSkyDays 2020 Online

はじめに

「DX先進企業と変革のリーダーが語る2日間」をテーマに、2020年10月20日(火)と21日(水)の2日間で開催した「TerraSkyDays 2020 Online」。2017年からスタートして5回目となる今回は、オンラインでの開催という初の試みでした。2日間で述べ6時間10分という長丁場も初めてでしたが、「2日間を通してストーリー性があり、わかりやすかった」「オンラインで手軽にさまざまな講演を聴くことができてとても便利」など、ご好評をいただきました。
本稿では、「ニューノーマル時代の営業の働き方改革。CRM×電子契約×社内コミュニケーション」をテーマに、弁護士ドットコム株式会社 橘大地氏、株式会社カオナビ 生駒正道氏にご登壇いただいたセッションの様子をお届けします。

まずは、弁護士ドットコム 橘氏より電子契約サービス「クラウドサイン」について、お話いただきました。

以前は法律事務所で弁護士活動をしていた橘氏。この弁護士時代の経験が、クラウドサインを立ち上げるきっかけになったのです。

「メガバンクや地銀を含めて10当事者で融資をするシンジケートローンの場合、契約書を郵送してハンコリレーを回していきます。一社あたり大体2週間、融資実行まで結局2ヵ月ぐらいかかってしまうことがあります。
契約条件がまとまっているのに、ハンコが理由で2ヵ月間融資実行が行われないのです。スタートアップの投資契約の場合、すぐにサービスをグロース(成長)させたいと思っても、ハンコが理由で2ヶ月間投資がストップしてしまうというケースを多く体験しました」(橘氏)

2ヵ月かかっていた契約を1日でできるようにすることで、「明日にでも企業再生を実行し日本の生産性や競争力を高めていきたい」という思いでクラウドサインを立ち上げたということです。

80%を超えるシェア、導入先は10万社以上

こういった契約に関する問題を解決するために誕生したクラウドサイン。現在は電子契約市場の約80%を占め、導入先は10万社を超えています。今年からは、クラウドサインで締結した書面を証拠書類として法務省の登記審査にかけることができるようになり、トヨタ自動車・三井住友銀行・ソニーといった世界を代表する日本企業にも利用されています。

また、2019年10月には、三井住友銀行とともに「SMBCクラウドサイン」という合弁会社を立ち上げました。今後は、地銀も巻き込んでクラウドサインを販売し、契約の電子化を進めていきます。

さらに、不動産店舗においても導入が進んでいます。
引っ越しをする場合、内見時、引っ越し時に店舗に出向いて契約を結ぶ必要があり手間がかかります。
「クラウドサイン使えます」というのぼりを出すことで、10代・20代のユーザーに「契約手続きが簡単だ」という印象を持ってもらえるというメリットにつながっています。

新型コロナウィルスの影響で生じた新たな導入理由

クラウドサインの導入する理由としては、今までは生産性向上やコスト削減などが大半でした。2020年に入ってからは新型コロナウィルスの影響により、新たな理由で導入するケースも増えてきています。

「新型コロナウィルスの影響により、『取引先のためにクラウドサインを導入する』という経営判断をする企業が増えています。
自社がクラウドサインを導入していない場合、取引先は法務担当が出社して契約手続きをする必要があります。クラウドサインを導入している取引先が出社しなくてもいいように、『自社もクラウドサインの整備をしなければいけない』と考えているという話を聞くことが多くなりました。
実際に、2020年4月は月間で6,500社にクラウドサインを導入いただきました。また、この時期にメルカリ様・LINE様・サントリー様がクラウドサインを導入するという声明を出しました。『これからは電子契約によって在宅勤務をしながらでも企業取引を円滑に進める』という経営判断をしていただいたことに、とても感謝しています」(橘氏)

幅広い法務業務に活用できるクラウドサイン

このように、導入・活用が進むクラウドサイン。
電子取引だけではなく、「過去の紙の契約書も含めた管理」や「AIを活用した戦略の策定」ができる、契約書を起点とした新たなサービスを展開しています。

<クラウドサイン SCAN>
過去の契約書を送ってもらえれば、弁護士ドットコムがスキャンしてクラウドサインにアップロードするサービスです。
これから発生する契約書だけでなく、過去の契約書もまとめて電子的に一元管理できるため、契約書の検索や日付管理を効率化できます。

<クラウドサイン AI>
過去の契約書をクラウドサインにアップロードすると、契約書の中身を AI が自動判定するサービスです。
このクラウドサインAIによって、「来月切れる契約のうち全体の12%は更新されないので、何か対策をしよう」「損害賠償上限規定が6%になっているので、今年は2.5%に下げよう」といった戦略を考えることができるようになります。
さらに、契約書ごとの処理件数や事業部門ごとの契約推移などを把握することもできます。

また、クラウドサインの利便性を高めるために、Salesforceやsansanをはじめ50を超えるサービスと連携できます。

その中でも、クラウドサインとSalesforceを連携することで契約管理をスピーディーにできる「クラウドサインSalesforce版」の導入について、カオナビ 生駒氏にお話を伺いました。

契約業務で発生していた2つの課題

クラウド型人材マネジメントシステムを提供するカオナビ。
カオナビで社内全般のシステムを管理する生駒氏は、契約業務に関して2つの問題を感じていました。

1つめは、時間的な問題です。新型コロナウィルスの影響で会社に行くこともままならなくなり、契約書にハンコを押すこと自体時間を要するようになってしまいました。

2つめは、手間の問題です。せっかく契約書にハンコを押してもらっても、入力内容や押印自体の不備があったりすると、お客様に返送してもらうようなことも発生していました。

こういった問題を解決するために、生駒氏は3つの方向をめざしたということです。
「まずは時間や手間といった問題が発生していたハンコを押すこと自体をなくすこと、もうひとつは営業担当や営業事務にかかっている負荷をなくすこと、さらには既にこれらの問題が起こっていることもあり、すぐにでも利用できることをめざしました。
カオナビだけでは解決できないことがありましたので、テラスカイ様のグループ会社である株式会社キットアライブ様にご支援いただき導入を進めていきました」(生駒氏)

クラウドサインSalesforce版 導入のポイント

このように方向性が決まった後、クラウドサインSalesforce版を導入する際には、以下のようなことを心がけたということです。

「導入にあたっては、今までなかった仕組みを入れるということになりますので、業務フローが大きく変わります。そのために、導入を進めていくのと並行して、『どういう風にオペレーションを変えるのが一番良いか』『どんな業務フローにすると良いか』といったことについて、細かく具体的に営業部門とコミュニケーションをとって進めてまいりました。
また、導入にあたってはまずは数名の営業担当に使ってもらい想定したオペレーション通りかどうかといったことも確認したうえで、全社で展開していきました。さらに、営業部門だけでなく法務部門からも 『Salesforce で署名する人の情報を知りたい』という要請がありましたので、これもオペレーションを複雑にすることなく対応していきました」(生駒氏)

このような点に注意してクラウドサインSalesforce版を導入した結果、以下のようなメリットがあったということです。
・時間や場所にとらわれることなく契約書の手続きを進められるようになった。
・SalesforceのCommunity Cloudを活用することで、お客様自身で契約書の情報を入力できるようになった。そのため、正確な情報が記入された契約書を発行することができるようになり、改めて修正してもらうといった手間もなくなった。

最後は、「クラウドサインを活用してビジネススピードを上げてお客様の成功へつなげていきたい」という今後の展望についてお話いただきました。

クラウドサインとSalesforceを連携するメリット

ここで、ナビゲーターであるテラスカイ 松岡と橘氏にて、質疑応答を行ないました。

<質問1>
クラウドサインとSalesforceを連携するメリットは何ですか?(松岡)

普段お使いの Salesforce を使って、ワンクリックで相手先に申込書を送ることができます。今までは一週間ぐらい申込書回収に時間がかかることがありましたが、営業したその日に申込書回収できるといったようにリードタイムが本当に短くなります。
慣れ親しんだSalesforceを使って、今までの業務フローを全く変えずに申込書のデジタル化を実現できるのが大きなメリットだと思います。(橘氏)


<質問2>
テラスカイが提供するグループウェア「mitoco」は、Salesforceを基盤としており、お客様を軸として営業の報告内容や活動情報を見ることができるサービスです。また、契約を電子化しても、社内の申請や手続きが電子化していないと出勤せざるをえませんが、mitocoのワークフロー機能を使えば社内の申請・手続きを電子化することができます。
このmitocoとクラウドサインSalesforce版を連携することで、どんなメリットがありそうでしょうか。(松岡)

営業の場合、見積書作成、値引き申請、契約書作成・締結といった多くの業務が発生しますが、これらの書類を作成する際に、顧客情報を何度も入力する必要があります。
mitocoとクラウドサインを連携すれば、社内の申請のために何度も同じ顧客情報を入力する必要がありません。社内の申請から契約書作成・回収までワンクリックで対応できますので、営業の生産性が飛躍的に上がると思います。(橘氏)


最後に、クラウドサインが選ばれる理由をお話いただき、セッションは終了しました。

「クラウドサインは、弁護士として活動してきた私自身の痛みをプロダクトに反映しています。製造業からインターネット企業、不動産企業、建築業界など10万社に導入いただき、私たちがコンサルティングをしてきた実績もあり、10万社のお悩みを聞きながら製品開発をしてきました。
また、電子契約を導入する際には『こうやったら業務フローが整う』『取引先や社外の企業には、こうやって業務フローを変えてもらうとよい』といったノウハウが必要になってきます。業界シェアナンバーワンのノウハウがあるという点で、クラウドサインが選ばれているのではないかと思います」(橘氏)
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