2020.10.30

【イベントレポート】「全国667店舗の問い合わせを集約する、社内ヘルプデスクの在宅化事例」- TerraSkyDays 2020 Online

「DX先進企業と変革のリーダーが語る2日間」をテーマに、2020年10月20日(火)と21日(水)の2日間で開催した「TerraSkyDays 2020 Online」。2017年からスタートして5回目となる今回は、オンラインでの開催という初の試みでした。2日間で述べ6時間10分という長丁場も初めてでしたが、「2日間を通してストーリー性があり、わかりやすかった」「オンラインで手軽にさまざまな講演を聴くことができてとても便利」など、ご好評をいただきました。
本稿では、「全国667店舗の問い合わせを集約する、社内ヘルプデスクの在宅化事例」をテーマに、日本調剤株式会社 侭田光広氏とTwilio Japan合同会社 山本契氏にご登壇いただいたセッションの内容をご紹介します。新型コロナウイルスの感染拡大とともに広がったリモートワーク化の波に対応するため、クラウドサービスのTwilioを利用して在宅コールセンターを構築した、侭田氏のお取り組みをご覧ください。

コロナ禍に対応して社内ヘルプデスクを在宅化することに

日本調剤株式会社は調剤薬局事業を中核とした総合ヘルスケアカンパニー。本社は東京都千代田区にあり、年商は2,685億円の大手調剤薬局です。調剤薬局業界で唯一、薬局業務に使用する調剤システムを自社で開発・運用し、ICTに注力されています。
侭田氏は2005年12月に入社し、開発部門とインフラ部門をローテーションしながら従事。現在は社内ヘルプデスクチームのチームリーダーとして、業務改善に取り組んでいらっしゃいます。ヘルプデスクは、3,331名の薬剤師が所属している全国667店舗からの問い合わせを、5名のスタッフで受けている状況だそうです。
オフィスへの問い合わせを受けるという性質上、ヘルプデスクはテレワークとは縁が遠い業務だと、侭田氏は考えていました。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大し、4月7日に東京で緊急事態宣言が発せられました。これを受けて、なるべく出社を控えられるような仕組みや体制を検討するように、会社から指示が出ます。そこで、自宅で電話を受けられるような仕組みはないか、と探し始めたことが、在宅コールセンターを構築するに至った大きな契機となったそうです。
「いろいろ探している中で、テラスカイさんが非常に短い期間でコールセンターを構築した、といった事例を拝見しました。さっそくテラスカイさんのセミナーに参加しまして、Twilioという製品を見つけるに至りました」(侭田氏)
Twilioは、音声通話・SMS・Eメール・ビデオ通話など、 さまざまな顧客コミュニケーションを一元化するクラウドサービスです。素早く構築でき、CRMシステムなどと連携できる高い柔軟性が特徴です。テラスカイでも全社テレワークの実施に伴い、Twilioを利用して在宅コールセンターを立ち上げ、4月から運用を開始しています。
コロナ禍において、在宅化に対応しないといけない、という要望が多く寄せられている、とTwilioの山本氏。
「やはりスピードですね。この状況下では、すぐに導入しないといけない。そうしたニーズの中で、我々のソリューションで優位なポイントである、スピードという点で選択していただいているケースが多くあります」(山本氏)

Twilio Flexを採用して最小限の業務環境を短時間で構築

日本調剤の社内ヘルプデスクの実装方法としては、Twilio Flexで画面を構築。電話をかける・受けるという最小限の業務が実行でき、かつ、短い時間で構築ができることが導入のポイントとなったそうです。また操作画面の分かりやすさも、Twilioを採用した理由の1つ。
「スタッフにもわかりやすい直感的な操作で業務ができるので、すぐにTwilioを採用しようと決めました」(侭田氏)
Twilio Flexはクラウドベースで応対するオペレーターの支援をするシステム。複数のチャンネルの問い合わせを1つのインターフェースにして、オペレーターと顧客との接点にできるのが特徴です。
「キーポイントは、電話やSMS、LINEなど、いろいろなチャンネルを受け入れられる、ということ。そして、ブラウザベースですので、どこからでも使えます。また、オンプレミス製品と異なり、足りない機能を自社でコーディングして追加いただいたり、複数の製品やソリューションと組み合わせたりすることで、柔軟性の高いコンタクトセンターのプラットホームをご利用いただけます」(山本氏)

在宅化に踏み切る上での課題は社内周知と細かな工夫で解決

「在宅化に踏み切ることに関して、電話番号はどうするのか、と、在宅化して電話を取り切れるのか、という大きく2つの課題に不安がありました」と、侭田氏。
1つ目の電話番号の課題は、Twilioの転送機能を使って解決。ユーザーには電話番号の変更を意識させずに、在宅のテレワーク化を実現した、とのこと。
また、2つ目の電話を取り切れるのか、という課題は、事前に社内で周知することで解決。具体的には、テレワーク化することによってヘルプデスクが電話に出にくくなり、多少は不便になることを周知。さらに、5コール以上お待たせする場合は、お待ちいただくか、おかけ直しいただくように、アナウンスを流す工夫も施したのだそうです。

在宅化したことでオペレーターが感じていた通勤のストレスを緩和

社内ヘルプデスクを在宅化してから2ヶ月が経過。まず、オペレーターに関しては、精神的なストレスの緩和につながった、とのこと。
「在宅化前は、緊急事態宣言が出されている時でも、出社して電話を受けなくてはなりませんでした。在宅化後は、通勤することに対して感じていたストレスを減らせたかな、と思います」(侭田氏)
また、大きな改善として、ヘルプデスクの受付時間を明確化した、とのこと。ヘルプデスクの時間外になった場合は、本社の電話が鳴るように設定。本社にいる何人かのシステム担当が、翌日に改めて電話をしていただくように説明するようにしたのだそうです。
一方、店舗側も、コロナ禍の状況にあることを最大限理解して、全社一丸の姿勢で乗り切っています。
「今のところクレームはいただいておりません。我々としても感謝しているところです」(侭田氏)

在宅化を推進するうえでは店舗のバックアップ体制を維持し続けることに注力

ヘルプデスクを在宅化するにあたり、経営層にはICTに対しての理解があったので、提案がすぐに受け入れられたのが非常に大きかった、と侭田氏。ただ、店舗に関しては、医療機関という性格上、特別の配慮が必要であったそうです。
「どのような時も店舗をオープンさせなければならない、その最前線に立っているのが薬局です。その業務をバックアップするのがヘルプデスクの仕事 。バックアップの体制を絶対に途切れさせないことを意識しました。また、店舗が困っていれば最大限対応する、という、リスペクトを持ってあたらせていただく、というのが気持ちのうえで大事なこと、と考えています」(侭田氏)

DXでヘルプデスクと店舗の双方の負担減を推進

ヘルプデスクが在宅化されたとはいえ、問い合わせは絶対数として多いまま、と侭田氏。今後は、問い合わせをなるべく減らし、店舗側が電話をかける負担も減らそうと試みているのだそうです。
「今年の1月から、FAQのチャットボットを公開して運用することに取り組んでおります。これにより、運用前に比べて2割の問い合わせ件数の削減に成功しました」(侭田氏)
さらに、「問い合わせの検索機能をTwilioと統合させて、1つの画面で検索できるようにしてみたい」とも語られた侭田氏。DXのさらなる推進に思いを巡らせていらっしゃいました。
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