2025.01.09
Salesforce Order Management(SOM)で注文情報管理
目次
via pixabay.com
はじめに
Salesforce Order Management(以降SOM)は、注文管理業務の効率化や自動化を可能にするアプリケーションです。
既にSales Cloud等のSalesforce製品を導入済みのお客様からは、顧客情報と注文情報の一元管理ができるCommerce Cloudとの親和性の高さで注目されています。
本ブログではSOMの代表的な機能を紹介します。
既にSales Cloud等のSalesforce製品を導入済みのお客様からは、顧客情報と注文情報の一元管理ができるCommerce Cloudとの親和性の高さで注目されています。
本ブログではSOMの代表的な機能を紹介します。
前提
SOMは各種Commerce Cloudに対応していますが、本ブログではSalesforce Platformで管理するCRMデータとシームレスに連携可能なB2B Commerceを対象とします。(参照:SOMとSalesforceソリューションの関係)
SOMの機能概要
SOMは顧客がCommerce Cloudで注文した情報を管理します。そして、注文管理業務の中心として、他システムとの連携のオーケストレーションにより業務を効率化します。(参照:Commerce Cloud + SOMの概要図)
また、付属の在庫管理システムであるOmnichannel Inventory(以降OCI)で在庫の一元管理を行うことで、販売機会損失を最小限に抑えることができます。その他にも分散注文管理(以降DOM)による注文履行業務の最適化機能をはじめとした業務を効率化する機能が多く搭載されています。
標準オブジェクトとER図
SOMで使用する標準オブジェクトは50程度あり、そのリレーションも複雑です。今回は主要機能で使用する標準オブジェクトを抜粋し、SOMのER図として紹介します。また、参考資料として、B2B CommerceのER図も合わせて紹介します。
SOMの標準オブジェクト構成
No. | オブジェクト名 | 説明 |
---|---|---|
1 | ストア | ストアフロントとして注文受け付けを行う。 |
2 | 取引先 | バイヤーの管理を行う。 |
3 | 取引先責任者 | バイヤーに紐づく購入者。 B2B Commerceのライセンスを使用してストアで商品を購入が可能。 |
4 | 注文配送方法 | 配送方法の管理を行う。 |
5 | ロケーション | 受注や出荷指示を行う場所の管理を行う。 |
6 | ロケーショングループ | 複数のロケーションをグループ化して管理を行う。 |
7 | ロケーショングループ割り当て | ロケーションとロケーショングループの中間オブジェクト。 |
8 | 注文 | ストアフロントで受けた注文の原本。 |
9 | 注文商品 | ストアフロントで受けた注文の明細の原本。 |
10 | 注文配送グループ | 受注時点での配送単位の原本。 |
11 | 注文概要 | ストアフロントで受けた注文の写しであり、注文管理業務の中心。 |
12 | 注文商品概要 | ストアフロントで受けた注文商品の写しであり、注文管理業務の中心。 |
13 | 注文商品グループ概要 | 受注時点での配送単位の写し。 |
14 | 履行注文 | ピッキングや梱包のステータス管理を配送ごとの管理を行う。 |
15 | 履行注文商品 | ピッキングや梱包のステータス管理を配送ごとの明細の管理を行う。 |
16 | 出荷 | 配送状況の管理を行う。 |
17 | 出荷項目 | 配送状況の明細の管理を行う。 |
18 | 請求書 | 支払金額の管理を行う。 |
19 | 請求行 | 明細ごとの支払金額の管理を行う。 |
SOMのER図
SOMではストアフロントで受けた注文の管理業務を行います。従って、マスタとして事前に設定したストア情報や、配送方法を元に作成された、トランザクション注文が管理対象です。注文Objは受注した内容の原本として保持し、注文ステータスやキャンセル処理、返品処理等の変更管理は注文概要Objで行います。余談ですが、キャンセル処理を行った際の変更管理はマイナス注文(いわゆる赤字伝票)の作成によって行われます。履行注文Objでは出荷指示が行われた後の、倉庫や店舗でのピッキングや梱包のステータス管理を行います。出荷Objでは配送状況のステータスや追跡番号、追跡URLを管理します。
B2B CommerceのER図
B2B Commerceの設定により、取引先ごとに購入できる商品や価格の制御が可能です。Sales Cloud等を導入済みのお客様は顧客情報を元に商品設定や割引設定を行うことで、より効果的な取引を行うことが可能になります。
SOMのライフサイクル
前章で紹介したSOMで使用するObjのステータス管理の例を、一般的な受注管理業務を例に挙げて紹介します。(参照:一般的な受注管理業務とSOMの対応関係表)
・注文概要Obj:受注から配送完了後対応まで、注文管理業務の全体を通してステータスを管理します。
・履行注文Obj:倉庫や店舗でのピッキング、梱包、出荷処理のステータスを管理します。
・出荷Obj:配送業者や配送状況URL、配送状況のステータスを管理します。
・履行注文Obj:倉庫や店舗でのピッキング、梱包、出荷処理のステータスを管理します。
・出荷Obj:配送業者や配送状況URL、配送状況のステータスを管理します。
SOMの注文管理
本章ではSOMのライフサイクルに沿った注文管理機能を紹介します。
標準コンポーネント
注文概要Objには注文状況を分かりやすくするための標準コンポーネントが用意されています。
まずは、注文概要レコードの画面を確認します。
まずは、注文概要レコードの画面を確認します。
No. | コンポーネント名 |
---|---|
1 | 強調表示パネル |
2 | 受信者別の注文商品概要 |
3 | 関連リスト-1つ |
4 | 注文概要の合計 |
5 | アクション&おすすめ |
6 | 関連リストのクイックリンク |
注文概要レコード(概要タブ)にはデフォルトで6種のコンポーネントが設定されています。今回は、No.2 受注者別の注文商品概要、No.4 注文概要の合計について紹介します。
受注者別の注文商品概要は注文概要に紐づく、注文商品概要を注文配送グループ概要ごとに表示します。名前項目を押下することで注文商品概要レコードに遷移できます。表示列を変更する場合は、注文配送グループ概要Objの関連リストから注文商品概要Objの表示項目を編集することで変更できます。
注文概要の合計は注文概要の金額計算を表示します。デフォルトでは以下の内容が設定されています。
・小計:価格表に登録されている金額が参照した商品金額の合計
・注文の調整:プロモーションによる割引額
・送料:配送方法ごとに設定した送料
・税金:ストアで設定した条件に応じた課税額
表示項目やラベルを変更する場合は、Lightning アプリケーションビルダーで変更できます。
・小計:価格表に登録されている金額が参照した商品金額の合計
・注文の調整:プロモーションによる割引額
・送料:配送方法ごとに設定した送料
・税金:ストアで設定した条件に応じた課税額
表示項目やラベルを変更する場合は、Lightning アプリケーションビルダーで変更できます。
標準フロー
SOMでは以下の標準フローや、カスタムフローを使用して注文管理を行います。
Salesforce Order Management Lite ライセンス
No. | フロー名 |
---|---|
1 | [注文概要を作成] フロー |
2 | [プロセス例外を作成] フロー |
3 | [割引] フロー |
4 | [品目をキャンセル] フロー |
5 | [注文の再配送] フロー |
6 | [品目を返品] フロー |
7 | RMA 品目を返品 |
8 | RMA クレジットメモの作成と返金の確認フロー |
Salesforce Order Management Growth ライセンス
No. | フロー名 |
---|---|
1 | [等価交換] フロー |
2 | 「Exchange with RMA Flow (RMA フローで交換)」 |
3 | 分散注文管理 (DOM) フロー |
Order On Behalf 権限セット
No. | フロー名 |
---|---|
1 | 代理注文フロー |
業務に応じてフローをカスタマイズする際は、テンプレートからコピーして変更を加えます。
履行注文Objを作成するフローは、DOMフローやカスタムフローで作成します。また、DOMフローは後述するOCIと連携することでより効率的な注文、出荷指示を可能にします。SalesforceからFlow Packageが提供されており、それをベースに業務に合わせてカスタマイズすることができます。出荷Objを作成するフローはテンプレートが提供されていないため、カスタムフローや手動でレコードを作成します。
履行注文Objを作成するフローは、DOMフローやカスタムフローで作成します。また、DOMフローは後述するOCIと連携することでより効率的な注文、出荷指示を可能にします。SalesforceからFlow Packageが提供されており、それをベースに業務に合わせてカスタマイズすることができます。出荷Objを作成するフローはテンプレートが提供されていないため、カスタムフローや手動でレコードを作成します。
フローコアアクション
標準で提供されているフローをはじめとしたSOMのフローは、以下のフローコアアクションを使用して実行します。
No. | フローコアアクション |
---|---|
1 | 注文商品概要を追加 |
2 | 調整注文商品概要のプレビュー |
3 | 調整注文商品概要の送信 |
4 | 支払いの承認 |
5 | 履行注文商品のキャンセル |
6 | キャンセル注文商品概要のプレビュー |
7 | キャンセル注文商品概要の送信 |
8 | 保持されている履行注文容量を確認する |
9 | クレジットメモを作成 |
10 | 履行注文を作成(単独ロケーション) |
11 | 履行注文を作成(複数ロケーション) |
12 | 変更注文から請求書を作成 |
13 | 履行注文から請求書を作成 |
14 | 注文支払概要を作成 |
15 | 注文概要を作成 |
16 | 返品注文を作成 |
17 | 資金を非同期で確認 |
18 | 返金を非同期で確認 |
19 | 分割が最も少ないルートを検索 |
20 | OCIを使用した分割が最も少ないルートを検索 |
21 | 履行注文容量値を取得する |
22 | 履行注文容量を保持する |
23 | 平均距離による注文ルーティングラフ |
24 | 保持されている履行注文容量を開放する |
25 | 返品注文商品概要のプレビュー |
26 | 返品注文商品概要の送信 |
27 | 返品注文商品の返品 |
コアアクションを使用する際は、正しい入力変数を設定する必要があります。今回はNo.10 履行注文を作成(単独ロケーション)を例に説明します。
履行注文の入力欄に、Apexで定義された変数InputRepresentation(ConnectApi_FulfillmentOrderInputRepresentation)を入力することで実行可能になります。この変数はこれより前のフローにより値を設定します。以下が必要な値です。
コアアクション入力値を設定した上でフローコアアクションを実行します。
Omnichannel Inventory(OCI)
OCIはSalesforce Order Management Growthライセンスで利用可能な在庫管理システムです。B2B CommerceやSOMと連携することで、プロコードでの開発を最小限に抑えた実装が可能になります。また、DOMフローではOCIと同期した倉庫や店舗情報を使用し、出荷指示の最適化を行います。まずはOCIの管理画面を紹介します。
OCIの管理画面
No. | 項目 | 説明 |
---|---|---|
1 | ロケーショングループ | ストアと1:1で対応させる在庫管理単位 |
2 | ロケーション | 各倉庫単位 |
3 | ATF | 履行注文作成可能な数量 ⑤-⑦-⑧ |
4 | ATO | 注文可能な数量 ⑤+⑥-⑦-⑧ |
5 | 手持在庫数量 | 現在販売可能な数量 |
6 | 将来の在庫 | 事前予約可能な数量 |
7 | 予約 | 注文作成時に追加される数量 |
8 | 安全在庫 | 欠品を防ぐために取り分けておく数量 |
B2B Commerceで在庫数に応じた受注可能判定を自動で行うことができます。
ストアで受注した注文数はNo.7 予約に登録されます。ストアの設定により、登録先をロケーショングループ、ロケーションから選択できます。また、履行注文を作成する際はロケーショングループからロケーションに対して予約の割振りを行います。
また、複数のストアで参照する倉庫共有している場合、一方のストアで受注した注文の出荷指示状況を他方のストアのATOやATFに反映することが可能です。(参照:ロケーションの構成例)
ストアで受注した注文数はNo.7 予約に登録されます。ストアの設定により、登録先をロケーショングループ、ロケーションから選択できます。また、履行注文を作成する際はロケーショングループからロケーションに対して予約の割振りを行います。
また、複数のストアで参照する倉庫共有している場合、一方のストアで受注した注文の出荷指示状況を他方のストアのATOやATFに反映することが可能です。(参照:ロケーションの構成例)
DOM
倉庫や店舗の在庫状況をOCIで管理することで、履行注文の作成、配送分割の最適化を図ることができます。
また、配送先と倉庫や店舗の拠点住所を参照することで、近接した拠点への出荷指示が可能になり、配送コストの削減や購入者に商品を届ける時間短縮につながります。
また、配送先と倉庫や店舗の拠点住所を参照することで、近接した拠点への出荷指示が可能になり、配送コストの削減や購入者に商品を届ける時間短縮につながります。
おわりに
今回は、SOMの代表的な機能を紹介しました。B2B Commerceと共に機能拡張、最適化されているので、今後の機能追加にも注目していきたいです。
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