2021.05.19

B2Cビジネスへの新規参入コンサルティング案件 ~顧客行動分析事例のご紹介

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gettyimages (20698)

案件背景

コンサルティングを行う場合、常に2つの要素を慎重に見極め、大胆にプランを作る必要があります。一つは依頼された顧客企業の体制とその業界についての調査・解析、もう一つは常に流動している顧客企業のユーザ動向の分析です。
本稿では、とある製造業A社において、A社の属する業界調査と、この業界のユーザの行動分析をどのように行ったかをレポートします。
この業界はメーカーシェアが固定化し保守的となっていながら、新規の販売業態に振り回されている一方、ユーザもメーカーへの高いロイヤリティを持つユーザと、ドライで流動的なユーザが混在する、新旧がせめぎ合って矛盾を抱えている状態にあります。

新規ビジネス参入にあたっての顧客行動分析

A社では、従来、販売代理店を通じて商品提供を行うB2Bのビジネスモデルが主流でしたが、ユーザによるネット購買が拡大傾向にあること、さらにコロナ禍によりその勢いが加速していることを踏まえ、メーカーから直接サブスクリプション型でサービス提供を行うB2Cビジネスを新たに始めようとしていました。どのような内容・方法でサブスクリプションサービスを提供していくかを検討するにあたって、まずは顧客ニーズを探るため、以下にご紹介する4つの分析を実施しました。

①ネットリサーチによる顧客セグメント分析  ~ターゲット顧客群の基本特性を知る

ユーザの購買行動に関する大まかな動向を把握するため、対象商品のユーザ1,000名に対し、ネットリサーチを行いました。よく利用しているメーカー、商品タイプ、その利用頻度、次回購入意欲、購入時に重視すること、購入チャネル、商品やネット購入、サブスクリプションサービスに関する不満・不安等についてアンケートを取り、A社のロイヤル顧客、一般顧客、離反顧客、未認知顧客をセグメント分けして、各セグメントの特性を分析しました。
アンケートにおける注意点は、広く意見を聞くことではなく、事前に仮説を立て、その仮説が合っているかどうかを検証することです。何でも質問して良い答えを得ようとするアンケートからは何も生まれません。

ここで、仮説検証結果の一部を以下にご紹介します。

「商品購入時に重視すること」について:
「価格」や「使い勝手」が重視されるのは想定通りでしたが、次いで「安全性」や「ブランド=信頼性」が重視されているという結果は、想像以上に業界特性を反映しているものと思われました。

「利用商品に関する不満」について:
「価格」「使い勝手」への不満はあるものの、最も多い回答が「特になし」であることは想定外でした。ユーザがそれほど強いこだわりを持って選択する商品ではないという特徴が見えてきました。

「購入場所」について:
ネットとリアルがほぼ半々であることは想定通りでしたが、リアルの中での店舗特性の内訳を見ると、この商品がコモディティ化しつつある現状が読み取れました。

「ネット購入に対する不満・不安」について:
ネット購入したことがあるユーザの不満が、「システム操作方法の分かりづらさ」「配送日数」であるのに対し、ネット購入したことがないユーザの不安は「自分に合う商品を選びづらさ」「商品の安全性」であることから、この商品に何を求めるかの価値観が二分されていることが見て取れました。

「サブスクリプションサービス利用経験」について:
利用経験者、および今後利用したいと考えているユーザの割合が約6割と高く、まだサブスクリプションサービスがあまりメジャーでない本商品において、予想以上にニーズが高そうだという結果が見られました。

「サブスクリプションサービスに対する不満・不安」について:
利用経験者、未経験者ともに、「配送周期や購入商品の条件変更の柔軟性」や「解約方法の分かりにくさ」に関する不満・不安が高く、これは想定通りでした。

これらの結果を、さらにA社に対するロイヤリティ別にセグメント分けし、性別年代等の属性や購買行動の特性について分析を行いました。

図1 ネットリサーチ結果抜粋

②N1分析(顧客インタビュー) ~一人の顧客の深層心理を徹底的に理解する

次に、A社のロイヤル顧客数人に対して、個別インタビューを行いました。これは、「N1分析」(※1)と呼ばれる手法で、特定のセグメントから一人の顧客(N=1)にインタビューして、購買行動を左右する言語化されていない深層心理のニーズまで徹底的に理解、分析するものです。そこから有効な打ち手となるアイデアを導き出し、他のセグメントの顧客に対しても適用していくことを目的としています。ネットリサーチで検証した仮説を、さらに個人のリアルな体験に当てはめ、検証を重ねるという意味合いも持ちます。

今回は、A社の商品を長く利用している30代から50代の男女数人に対して、個別にインタビューを行い、当該商品との出会いから、選択・購入した経緯、使い続ける中でどのような体験・感情の変化があったか、また想定している新サービスについてどう思うかを細かく聴き取りました。
結果として、長くその商品を使い続ける中では、生活環境や利用シーン、また直近では、コロナ禍という特殊な環境条件によってニーズは変化していますが、それぞれの局面でさまざまな理由によりニーズが満たされ、その積み重ねで商品をリピートしてきたという道のりがあったことが分かりました。そして、そのニーズを満たす要素をあらかじめ盛り込んだサービスを作ることが、ロイヤル顧客の獲得、拡大において重要そうだ、ということが見えてきました。
(※1)西口一希氏「顧客起点マーケティング」、翔泳社、2020年

③サービスコンセプトボード ~サービスコンセプトを可視化する

続いて、ネットリサーチとN1分析で得た新サービスへのアイデアを元に、サービスコンセプトを整理しました。コンセプト整理のフレームワークとして、「ABCDE」(※2)を用いました。
(※2)足立 光氏、土合 朋宏氏「マーケティング大原則」朝日新聞出版社、2020年

図2 戦略的コンセプト「ABCDE」

まだ仮説段階ですが、ここまで収集した情報を、一旦「サービスコンセプト」の形に可視化することで、関係者とディスカッションがしやすくなり、さらに磨いていくことができます。
ここでは、以下のような形で整理しました。

図3 サービスコンセプト イメージ例

④ペルソナとカスタマージャーニーマップ  ~想定したサービスをペルソナのジャーニーの中でシミュレーションする

①顧客セグメント分析、②N1分析を通じて把握した、サービスのターゲット像を具体的なペルソナとして設定し、そのペルソナに対して、③で作成したサービスコンセプトを当てはめてみて、どのようなカスタマージャーニーが想定できるかマップを作成しました。
「カスタマージャーニー(CJ)」とは、顧客の一連のブランド体験を「旅」にたとえた言葉です。顧客は特定のブランドや商品を認知、購入、再購入する段階で、店舗やECサイトなどさまざまな接点を行き来し、行動を取り、感情の起伏が生じます。この一連のプロセスを「顧客の旅=顧客体験」としてとらえ、それを時系列で可視化することによって、顧客の視点でその体験を把握し、改善することを目的とするツールが「カスタマージャーニーマップ(CJM)」(※3)です。
(※3)加藤 希尊氏「はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ」翔泳社、2019年

③のサービスコンセプトをCJMに当てはめてみることによって、どのような体験、感情が起こるかをペルソナの視点でシミュレーションしました。特に今回は、A社の社員に参加してもらうワークショップ形式でCJMを作成し、「顧客起点」でサービスを発想する体験をしてもらいました。そして、CJ上で発生する顧客のネガティブな体験、感情を可視化し、それを解決する要素を盛り込む形で、サービスコンセプトを再度修正しました。

図4 ワークショップで作成したCJM

図5 CJMイメージ(ToBeモデル)

おわりに

今回、サブスクリプションサービス参入に向けたコンサルティングによって、A社内で参入への懸念払拭と、今後の販売戦略の道筋が見えてきたことで、実現に向けてスタートを切ることができました。ただこれは、まだ第一段階にすぎません。実際にシステムを提供する中で、ユーザビリティ調査を行ったり、顧客の信頼を得る方法を追求するなど、コンサルティングの課題に終わりはありません。
次々に新商品・サービスが世に出され、競合ひしめく状況下では、顧客がサービスを利用する際に出くわすであろう体験を先回りし、スムーズかつ心地よい打ち手を提供してジャーニーを導くサービスこそが選ばれ、生き残っていくのだと思います。
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