2020.06.18

Salesforce最難関資格CTA合格 虎の巻

こんにちは、Salesforce認定テクニカルアーキテクト(CTA)の讃岐です。
大事なことなのでもう一度書きます。CTAの讃岐です

半年ほど前にSalesforce最難関資格CTAホルダーに聞く、合格の極意!という、仕事と称して社内のそうそうたるメンバーに自分が合格するべくいろいろヒアリングした記事を書きましたが、その時には「CTAに合格したい讃岐です」と自己紹介しておりました。
そうです、実はこの半年の間に合格致しました!!
何が嬉しいって、もうあの試験を受けなくてもいいってことが嬉しいです!レビューボードと呼ばれるプレゼン試験がめちゃめちゃしんどいんですよ。
まぁそれは半分冗談でもちろん普通に嬉しいのですが、やはり私が合格できたのも諸先輩方の助けがあったからということもあります。
CTAは日本でもまだ保有しているのが12名(テラスカイはそのうち5名で、うち1名は私です!!)ということもあり、まだまだ合格するための勉強方法などの情報が不足しています。
そこで、今度は私が上から目線で、これからCTAを目指す方に向けて、自分が実施した勉強方法や読んだ方がいいコンテンツ、試験テクニックなどをお伝えしたいと思います。
いろんな記事へのリンク集となるとは思いますが、皆さんのCTA合格への助けになれば幸いです。

試験の概要を押さえる

まずはCTAがどのような試験か把握しましょう。
認定テクニカルアーキテクト、通称CTAはSalesforceの開発者/アーキテクト系資格の最上位に位置し、前提となる試験が7個あります。一部ではドラ◯ンボールと呼ばれますが、残念ながら7個集めても願いは叶いません。この記事的にはラスボスと戦うための通過点です。
これら7個の試験はSalesforce試験でお馴染みの選択形式の試験であり、ちゃんと勉強すれば受かる試験です。気合で乗り越えましょう。(後述する各コンテンツも役立つと思います)

出典:Salesforce社 資格一覧

また、試験の概要を押さえるうえで大事な受験ガイドも確認しましょう。
受験ガイド(PDF直リンク)
CTAに限りませんが、認定資格を受ける上で受験ガイドを確認するのは基本の「き」です
レビューボードという仮想シナリオに基づいた審査員へのプレゼン試験方式についてや、受験者に求められる知識、試験で問われる範囲についても確認できます。穴があくほど読み込んでください
ところでこの記事を書くにあたって改めて受験ガイドを確認していたのですが、以前より試験時間が延びたようです。(以前は設計検討時間が2時間でしたが、3時間になるようです
これはチャンスです!レビューボードの難しいところは検討時間が短いというところだったのですが、これが延長されたことにより、しっかりと検討する時間がとれます。これを機会に、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ちなみにレビューボードが行われる日程はこちらで公開されています。
執筆時点で日本開催は記載されていませんでしたが、年に1,2回は実施すると聞いております。

お勉強コンテンツ

ここからは私が実際に学習したコンテンツやイベント等をご紹介致します。

開発者ガイド

Salesforce公式の開発者ガイドは知識の宝庫です。おすすめのドキュメントがたくさんありますので、優先度を高と中の2段階に分けてご紹介いたします。

【高】
・Identity実装ガイド
・シングルサインオン実装ガイド
試験の仮想シナリオではIdentity管理のための要件が出てきます。内部ユーザ、外部ユーザの認証方法、SSO、SAML,OAuth,OpenID Connectの各プロトコル、代理認証、外部のユーザディレクトリとの同期方法など。しっかり抑えておきましょう。

・インテグレーションのパターンと実践
ある程度の規模のシステムになると、Salesforce Platform内だけではなく、Salesforce外との連携が必要となります。インテグレーションの方式はいろいろあり、標準機能でできるもの、開発を要するもの、ETL,ESBを使うもの、プロトコルはSOAP,RESTの選択、同期、非同期どちらか、データの連携なのか、プロセスの連携なのか、検討すべきことはたくさんあります。このドキュメントではどのようなパターンが存在して、それらの時に何が最適なのかが記載されています。超優良資料なので10回は読みましょう。

・大量のデータを使用するリリースのベストプラクティス
・企業の規模に応じたレコードアクセス権の作成
試験では大規模なデータが発生するシナリオが出てきます。大量データが入るオブジェクトの特定、レコード件数の算出、それに対するパフォーマンスの最適化方法について説明する必要があります。大量データに対する対策や、データの持ち方によってどのような影響を与えるのか、こちらの資料で学んでおきましょう。

【中】
・モバイルSDK開発ガイド
モバイル要件に対しての実装方式が問われます。試験対策として考えるとこの資料自体はやや過度ではありますが、HTML5,Native Hybrid,Salesforce Mobikeアプリそれぞれで何が実現でき、各優位性を理解したうえで、適切なソリューションを提案できるようにしておいた方がいいでしょう。なお、具体的な開発方法まで問われたことはありません。

・プラットフォームイベント開発者ガイド
外部インテグレーションの実装方式の一つですが、汎用性が高くさまざまな要件に対応できます。プラットフォームイベントをpub/subするうえで何が必要となるか覚えておきましょう

・オブジェクトリファレンス
試験ではシナリオに基づくオブジェクト構成を考え、図として示す必要があります。カスタムオブジェクト周りは自分で考えればよいのですが、Slaesforceの基本の考え方は「標準でできることは標準でやる」なので、例えばセールス的なシナリオが出た時には素直に商談系のオブジェクトを使いましょう。商談系を使わずにカスタムオブジェクトで実装するにはそれなりに理由が必要となり、その理由が妥当でない場合は減点の対象となります。(ライセンスコストを下げるため、は試験では妥当な理由とはなりません)
皆さん、商談周りのデータモデルは書けますか?商談、商品、商談商品、価格表、納入商品、契約、見積...etc
こちらのリファレンスには標準オブジェクトに関するデータモデルが記載されています。商談周りだけではなく、サポート系のオブジェクトも含めて確認しておきましょう

・共有モデルの仕組み
レコードのアクセスコントロールに関する基本機能はAdmin試験やSharing And Visibility試験で抑えてもらっていると思います。レビューボードでは仮想シナリオの要件に対して、どの機能を選択するかが問われます。このドキュメントでは顧客のさまざまなシナリオに対して、どの機能を使うのが最適か書かれています。
ちなみに粒度の小さい要件に対して何が最適か考えるのは難しくないのですが、レビューボードではそれなりの規模のシナリオに対して、データモデル、主従、参照、プロファイル、共有設定、ロール、所有者など多角的に最適解が求められます。しんどいです。

試験対策ワークショップ

・CTA601
Salesforce認定講師による対策ワークショップです。現役CTAかつ試験の時に実際にジャッジをする立場の方が教えてくれるので、非常に実践的な内容になっています。単純な知識だけではなく、ちょっとした試験テクニックみたいなことも聞けることがあります。
え、お金がかかる?レビューボード試験に何回も落ちるよりかは安いですよ

eラーニング

Salesforceに関するeラーニングといえばTrailheadが思い浮かびますよね。もちろんTrailheadもいいのですが、ここではPluralsightをご紹介します。
PluralsightはITに関するオンライン学習サービスです。Udemyみたいなやつですね。その中でも特にCTA対策に有効なのが以下のものです。
・Salesforce Play by Play ギャラリー
こちらは@Donさんというアーキテクトの方がSalesforceのエキスパートを招いて、さまざまなテーマでゲストの方と熱い議論を行う動画コンテンツです。
ギャラリーは日本語に切り替えられます。また動画自体は英語ですが、Captionを有効にすることで、自動翻訳の字幕を表示することもできます。
Salesforceのセキュリティの話、開発手法の話、外部サービスとのインテグレーションの話、ガバナンス、開発ライフサイクルなどなど・・CTAの採点カテゴリに関する動画がたくさんあります。

中でも特に見て欲しいのはソリューションの図表化の動画です。レビューボードでは自分が設計したアーキテクチャを説明するためにドキュメントを作成することになります。シナリオをどのようにまとめて、それから図表化するかはとても重要なポイントです。この回にゲストで出ている方の「紙を4分割して書いていくまとめ方法」は非常に参考になり、私も活用しました。
ソリューションの図表化の話は無料で見られます。他にも有用なコンテンツがあるのでおすすめです。
え、お金がかかる?レビューボード試験を何回も(ry

TerraSky Tech Blog

テラスカイには多くのCTAが在席しており、このテックブログでも試験対策にもなる情報が満載です。
リンクだらけになりそうですが、おすすめの記事を紹介しておきます。
なお、少し古い記事もあるので、その点はご容赦ください。

Salesforce/Force.comのデータセキュリティ(オブジェクトアクセス)
Salesforce/Force.comのデータセキュリティ(レコードアクセス)
初期データ移行の勘所
Salesforceシステム連携のデザイン考察 1(ニーズとアプローチ)
Salesforceシステム連携のデザイン考察 2(ビジネスロジック連携/データ連携の検討ポイント)
Salesforceシステム連携のデザイン考察 3(仮想シナリオから考える連携デザイン)
開発ライフサイクルとリリース計画で意識したいこと
SalesforceだけでSSO(OAuth2.0)を試す:事前準備編
SalesforceだけでSSO(OAuth2.0)を試す:実装編
Force.comのテクニカルアーキテクトに求められる知識とスキル

SalesforceでSSO(認証プロバイダ:Twitter編)
非機能要件でユーザや開発者が意識したいこと
要件定義のススメ
Salesforceのデータモデルの勘所
Salesforceのシングルサインオンをまとめてみる
COEってご存知ですか?
共有セットを用いたレコードアクセス制御
Communityユーザーのレコードアクセスコントロールをまとめる
SalesforceのAPIを知って連携ツールを使いこなそう 【第1回】
これだけは押さえておきたい!Salesforceへの大量データローディングで考慮しておくこと
CTA資格の取得とTrailhead Academy Dayへの参加
Salesforceの組織戦略(Org Strategy)について考える~第一回目~
Salesforceの組織戦略(Org Strategy)について考える~第二回目~
Salesforceの組織戦略(Org Strategy)について考える~第三回目~
PlatformEventに触れてみよう(Javaアプリでイベントを購読してみる)
Salesforce最難関資格CTAホルダーに聞く、合格の極意!

コミュニティ

Salesforce界隈では有志のメンバーがさまざまなコミュニティを運営しており、その中でもCTAをめざす皆さんにおすすめなのがこちらのコミュニティです。
・Salesforce Archtect Group

こちらはCTAの一つ手前となるドメインアーキテクトがメインターゲットにはなるようですが、CTAのレビューボード対策にもなります。単なる聞くだけのお勉強で終わらず、参加者同士でテーマに沿ったディスカッションなども行なっています。
レビューボードでは自分が設計したアーキテクチャをジャッジに対してプレゼンする必要があり、コミュニケーションも採点項目に入ります。人に対して説明する練習になりますし、他の方が考えた設計を聞くことで勉強にもなります
発表者も募集しているはずなので、自分の知識の棚卸し、プレゼンの練習のためにもぜひ登壇してみてください。

サンプルシナリオ

レビューボードでどのような仮想シナリオが出るか知りたくありませんか?まったく同じボリュームではありませんが、近いものは入手可能です。
・Archtect Trailblazer Community サンプルシナリオ(Trailblazer Community要ログイン)

以前は英語版が数本あるだけだったのでGoogle翻訳をかけて、少ないシナリオを大事に大事にしながら練習していたのですが、なんと日本語のシナリオが12本も公開されています!これはめちゃめちゃありがたいです。これが出る以前に、もしメ◯カリで10万円で売っていたら、交渉なしでポチっていたかもしれません。それがなんと無料で手に入るようになったとは夢のようです。
必須で入手しましょう。

その他

ここまでいろいろなお勉強コンテンツを紹介しましたが、ここに書いているもの以外にもいろいろ利用しています。
私は上記のことをやりつつ、自分の知識として弱い点をTrailheadのモジュールやったり、ググったり、実際に機能を触って動かしたりなどしました。
まずシナリオをやってみると、自分の弱点が見えてくると思います。

試験に向けた勉強方法と心構え

ここからは試験に向けてのテクニック的なものをご紹介いたします。

シナリオを本番に近い形で練習する

ドラ◯ンボールを集めてドメインアーキテクト資格を取得している方は、レビューボードを合格するのに近い知識はお持ちになっているはずです。ではなぜ、みんなレビューボードでコケるのか。合格率が(たぶん)一桁%なのか。
個人的には試験に対する準備が圧倒的に足りないのではないかと思っています。
それは一つ一つの技術に対しての勉強というより、「レビューボード試験という短い時間でシナリオを読み込んで、自分のソリューションを検討し、ドキュメントを作成する」そして「ドキュメントをジャッジにプレゼンし、質疑応答で適切に回答する」という練習が必要だからです。
サンプルシナリオが12本も公開されているので、必ずそれはやってください。しかもただ眺めるのではなく、時間を区切ってソリューションを検討し、プレゼンするところまでやりましょう
レビューボードが難しいのは試験時間が短いからだと思います。幸い時間は延長されるようですが、それでも足りないでしょう。(顧客からRFPもらって2,3時間で提案してくれなんてありえないですよね!?)
短い時間の中で提案まで持っていく練習をしましょう。

自分のやり方を作る

練習する中で自分の形を見つけましょう。
どのくらいの時間でシナリオを読み込むのか、読みながら何をメモするのか、ドキュメントはどのタイミングで作るのか、何を書くのか(データモデル、ライセンス、ロール、Landscape before,after、Identity、データ移行、連携、開発ライフサイクル...etc)、ツール(パワポ、Excel、Word、紙)は何を使うのか。
図を書く時の色の使い分けまで決めておいてください。本番で「何色にどういう意味を持たせて使おう」と考える時間がもったいないです。
何度も何度も練習して、本番の時にはスムーズに頭と体が動くようにしておいてください。

ちなみに私はパワーポイントを開く時間すら惜しんで、紙やホワイトボードを多用するスタイルに落ち着きました。
これが人におすすめできるのかは分かりません。もしかしたらコミュニケーションの部分で減点があったかもしれませんが、適切に伝えることができればツールは問わないはずです。

いくつか私が練習で作成した図表の画像が残っていたので貼っておきます。あんまりきれいな書き方ではないですし、今見ると足りない情報もあるなーと感じますが、参考になれば幸いです。

Landscape

アクターとロール

データモデル

自分のソリューションを決める

要件に対する実装方法は複数あります。例えば連携一つとってみても、OBM、コールバック、Platform Event、変更データキャプチャ、外部サービス、Apexコールアウト、SOAP,REST、ESB、Salesforce Connectなどなど。
ジャッジに対して選択肢を提示するのも大切ですが、その中でどれを選んだのか、その理由はなぜなのか、についても説明できるようにしておきましょう。

メンターを見つける

なかなか難しいかもしれませんが、できれば現役CTAのメンターに付いてもらいましょう。あるいは一緒に受験する仲間でも良いです。
レビューボードではジャッジから鋭い質問が飛んできて、それに対して適切に回答する必要があります。
1人での練習だとプレゼンまでで終わってしまうのですが、本番を想定するのであればQAまでやった方が良いです。
なぜそのソリューションを選択したのか、他に選択肢はあったのか、こういうケースではどうなるのか・・などなど。
ジャッジからの質問は厳しいと感じることもありますが、加点をするために答えて欲しいことがあって、それに対するラストパスです。そういった意味では、やはり評価方式について知っているCTA合格者にレビューしてもらうのが望ましいでしょう。
ちなみにテラスカイではCTAが5人もいるのでメンターに事欠きません!本番と同等のジャッジ3人体制で練習に付き合ってもらえます。

大規模案件に関わる

レビューボードでは規模の大きいグローバルでの使用を想定した顧客のシナリオが提示されます。筆記試験までは机上の勉強で何とかなるのですが、ジャッジは経験がないことを見抜きます。
昔のレビューボードでは自身が関わった案件に関するプレゼンもあったそうですが、今は仮想シナリオのみになりました。しかし、求められる知識としては同じなので、自分自身として経験がないとちょっとした質問でボロが出てしまいます。
ぜひ大規模案件、それもアーキテクチャを考える立場や顧客に近いポジションで関われるようにしましょう。

試験の途中で諦めない

満点をとれるに越したことはないですが、1つ、2つ明らかに間違えてしまった、あるいは答えられなかったとしてもまだ試合は終わっていません。
実際、私も合格した時に、QAの中で1つどうしてもすぐに回答できなかったものがありました。以前の試験で1つの問題に時間を使いすぎて他のQAの時間がなくなってしまった苦い経験もあり、その時は回答をパスしました。
すぐに回答できるようなものであれば良かったのですが、データモデルやロールや共有など影響範囲が大きかったので、それを変更するのは容易ではありませんでした。
適切に答えられなかったので採点としては✕になったのだと思いますが、結果としては合格しています。また、もし合格まで届かなかったとしても、惜しかった人には追試という形式もあります。
回答に詰まる質問があったとしても、まだ立て直しは可能です。
諦めたらそこで試合終了ですよ!

まとめ

ということでCTA合格の自慢記事を書こうと思ったのですが、後半はわりと真面目で、そのうえ長文になってしまいました。
レビューボードは最難関と言われるだけあって非常に難しい試験ではありますが、振り返ってみるとアーキテクトとしての成長を感じることができる良い試験です。(二度と受けたくないですが)
もしかしたら今後の試験でジャッジとしてお会いすることもあるかもしれませんが、良いパス出しますのでぜひゲットゴールをお願いいたします。
がんばってください!

なお、この記事は「Salesforce 開発者向けブログ投稿キャンペーン」へのエントリー記事です。
42 件
     
  • banner
  • banner

関連する記事