Experience Cloudサイトを使用するときの注意点まとめ!気づかぬところに落とし穴・・・・?

今回はExperience Cloudの落とし穴について、実際の経験をもとにご紹介させていただきます。

Experience Cloud(旧Community Cloud)とは、Webサイトを構築し、Salesforceの機能やデータを活用して顧客、パートナー企業、従業員など、外部のユーザーとのコミュニケーションを活性化させるためのプラットフォームです。

今回は、この​Experience Cloudでwebサイトを制作する際の注意点や気をつけるべきことについて、実体験に基づいてまとめました。

1.Experience Cloudサイトとは?

Experience Cloudサイトには、以下のような特徴があります。

• コミュニケーションの活性化:
顧客、パートナー、従業員がコミュニティサイト上で直接つながり、情報共有や意見交換を促進します。

• 顧客との信頼関係構築:
顧客向けのコミュニティサイトを構築し、製品やサービスに関する情報提供、FAQサイトの設置、顧客同士の交流の場を提供することで、顧客満足度やブランドへのエンゲージメントを高めます

• パートナーの売上拡大:
パートナー企業向けのポータルサイトを構築し、リードの共有、案件管理、見積もり・発注機能などを提供することで、パートナーとの連携を強化し、売上向上に貢献します

• 社員の意欲と貢献の向上:
社内向けのナレッジ共有サイトやコミュニティサイトを構築し、社員間のコミュニケーションや情報共有を促進し、生産性向上につなげます

•CRM/SFAデータとの連携:
Salesforceに蓄積された顧客データや営業データと連携し、パーソナライズされた情報提供や効率的な業務フローを実現します

•簡単なサイト開発:
Experience Builderを活用することで、コーディングの知識なしで簡単にコミュニティサイトやポータルサイトを構築できます

1.1 サイトの作成方法

まずは、Experience Cloudサイトの作成方法について説明します。
事前準備として、Salesforceの設定から「デジタルエクスペリエンス > 設定」を選択し、「デジタルエクスペリエンスを有効化」にチェックを入れて保存します。

その後「すべてのサイト」の [新規] ボタンからサイトを作成します。

サイトの種類や目的に応じて、適切なテンプレートを選択しサイト名・URLを設定し作成ボタンを押します。

これでサイトの作成ができました。
この後はエクスペリエンスビルダーからサイトの中身を設定していきましょう。

1.2 サイトを使用するユーザーライセンス

Experience Cloudで作成したWebサイトを使用するには、Sales CloudライセンスやService Cloudライセンスが必ず必要というわけではなく、Experience Cloudライセンスを付与することでサイトを使用することが可能になります。
主なExperience Cloudライセンスとしては以下のものがあります。

Customer Community: 顧客からの問い合わせ受付やQ&A公開など、基本的な顧客向けコミュニティ機能を提供します。
Customer Community Plus: Customer Communityの機能に加え、ダッシュボードやレポート機能、より詳細な共有設定などが可能です。
Partner Community: 代理店など外部関係者と共通で案件管理を行いたい場合に使用します。リード登録、商談管理、見積もり、発注などの機能が含まれます。
External Apps: より高度なカスタマイズや外部システムとの連携が必要な場合に使用されます。
External Identity: 認証・ID管理に特化したライセンスです。

またこれ以外にもユーザー登録を行わないゲストユーザー用のサイトを作成することも可能で、その場合には原則無料でサイトを使用することが可能です。

1.3エクスペリエンスユーザー基本情報(オブジェクト新規更新削除について)

Experience Cloudライセンスには、権限についてさまざまな制限があります。
例えばPartner Communityでは取引先や取引先責任者の削除が不可であったり、Customer Community Plusでは商談オブジェクトを使用できないなどの制限があります。
ライセンスを選ぶ際には使用するオブジェクト・機能に合わせたものを購入しましょう!

2. 落とし穴はここに

Experience Cloudを使用する際には、さまざまな制限や落とし穴があります。

2.1 行動を含めたカスタムレポートタイプを使用したレポートを参照できない

パートナーユーザーライセンスのユーザーは行動オブジェクトを使用したカスタムレポートタイプを使用したレポートを参照しようとしたところ、以下のエラーが表示されます。

こちらのエラーをSalesforceサポートに確認したところ、活動の [デフォルトの外部アクセス権] を [非公開]以外に設定している場合、レポートは作成不可能なようです。
もしAppExchange等の他のパッケージを利用しており、行動のアクセス権を変更できない場合は標準のレポートタイプを使用したレポートであれば、上記の設定以外でも参照が可能です。

2.2 アプリケーションランチャーでExperience Cloudサイトアプリを使用したい

Salesforceライセンスを持つユーザーがExperience Cloudサイトを利用するにはSalesforceサポートに連絡し、アプリケーションランチャーにサイト用のアプリケーションを用意してもらうことができます。

このアプリケーションをクリックすることで、サイトのログイン画面を経由することなく、サイトにアクセスすることが可能になります。
便利なオプションですが、Salesforceにアクセスした後アプリケーションランチャーから選択してサイトにアクセスという形になるので少しだけ手間がかかってしまいます。

そこで、Experience Cloudサイトを指定してSalesforceの組織内で設定できるか試してみました。
Salesforceのタブ設定には「Webタブ」から外部URLを指定できます。
設定した後の画面にこちらが表示されました。

この表示はクロスオリジンフレーミング(異なるドメイン、プロトコル、ポートからのiframe埋め込み)を防止するために表示される画面となります。

Experience Cloudサイトのセキュリティ設定を変更すれば解決する問題かもしれませんので、Experience Cloudサイトのビルダーの設定で「セキュリティとプライバシー」セクションのクリックジャック保護を「すべてのページでフレーム化を許可 (保護なし)」に設定し、chromeのサードパーティcookieを「サードパーティの Cookie を許可する」を選択してみましたが、同じ表示のままでした。

Salesforceサポートに問合せを行いましたが、こちらはまだ対応していない機能のようで、Experience Cloud サイトは iframe タグで埋め込むことをサポートしていない状況との回答をいただきました。

2.3 パートナーユーザーの行動の共有設定について

パートナーユーザーが活動のオブジェクトを作成する際は、共有設定に注意が必要です。
活動の共有設定画面は、以下のような画面になります。

活動の共有設定には二つの選択肢があり、「非公開」または「親レコードに連動」が選択できます。
こちらの設定で「親レコードに連動」を選択していただくと、内部組織では、記載通り親レコードに参照があるユーザーであれば、同じように参照権を得られる設定となっています。

しかしパートナーユーザーが作成した行動レコードについては、活動に紐づくオブジェクトへのアクセス権があった場合でも、自身の作成した活動のみを参照できる動作となります。

パートナーユーザーが作成した活動のレコードを共有できるように設定するには、活動オブジェクトに存在する「公開」のチェックボックスをページレイアウトに表示し、TRUEに設定することで、初めて別のユーザーへの公開を行うことができます。

公開項目を表示する設定手順は「項目アクセス許可」→「行動」または「ToDo」→「項目ごとの参照」より「公開」を選択し、表示したいプロファイルに対して表示をさせる設定が可能になります。

こちらで、パートナーユーザーが作成した活動レコードの公開設定は可能となるのですが、新規レコード作成時、項目「公開」のチェックボックスを押さないまま作成された場合などは、そのレコードは自分自身でしか参照を行うことができません。

「公開」のデフォルト値を「TRUE」にする標準機能は、現在備わっていません。そのため、「フロー」などでレコード作成時に自動更新する処理を組まなければ、常に公開状態でレコードを作成することはできない点に注意が必要です。

また、共有設定の「親レコードに連動」と「非公開」に設定する際の動作の差異としては、[活動] が「親レコードに連動」かつ、親レコードの取引先が「公開/参照・更新可能」となっている場合には、親レコードのアクセス権に応じて、Partner Community ライセンスのユーザーが他の Partner Community ライセンスのユーザー(同一のパートナーロールに所属)の行動を「編集」可能となる動作となるので、更新の設定は共有設定部分を確認することになります。

2.4 パートナーユーザーがパートナーユーザーを有効化できない?

パートナーユーザーライセンスのユーザーが、同じパートナーユーザーを有効化することは可能です。
有効化するには、プロファイル設定画面に「代理外部ユーザープロファイル」または「代理外部ユーザー権限セット」という設定セクションから設定します。

「代理外部ユーザープロファイル」セクションではパートナーユーザーを有効化した際に付与できるプロファイルを設定することが可能であり、「代理外部ユーザー権限セット」でセクションでは付与できる権限セットを設定することが可能です。権限セットグループを付与することはできません。

2.5 Experience Cloudサイトのレポート・ダッシュボードリストの画面のサイズが小さい

Experience Cloudサイトを作成した場合、配置したコンポーネントのサイズが小さすぎる場合があります。
下記の画像はPartner Centralテンプレートを使用してダッシュボード・レポートの一覧を表示した画像です。
横幅に関しては「テーマレイアウト設定」から「最大ページ幅を設定」をオフにすることによって自動で調整されますが縦幅に関しては設定する箇所がありません。

この現象に関してSalesforceサポートに問合せしたところ、仕様であり今後のアップデートの予定はないとのことでした。
Experience Cloudサイトでは、CSSエディターを使用することが可能であり上書きすることは可能です。
ただしCSSエディターを使用する場合、テンプレートコンポーネントの今後のリリースでカスタマイズがサポートされない可能性もあるため、相応のリスクがあることは念頭に入れて実装する必要があります。

3.おまけ

モバイルパブリッシャーの申請について

モバイルパブリッシャーとは、Experience Cloudサイトをアプリとして申請するための機能となります。プラットフォームとして「iOS」または「Android」を選択でき、ややこしいアプリ申請をSalesforceがサポートしてくれる設定になります。本番環境でのみ、設定 > Mobile Publisher から設定できます。
標準のアプリケーションである、Salesforceモバイルにパートナーユーザーがログインすることができませんので、モバイルで使用したい場合はモバイルパブリッシャーの検討をすることになります。

モバイルパブリッシャーの機能として、プッシュ通知があります。Salesforceで通知を受け取る際に、アプリを起動していなくてもロック画面に通知内容が表示され確認できるようになります。
また画面も複雑な設定なく、iPhoneのような小さな画面にも柔軟なレイアウトを実現できます。

申請を行い、モバイルパブリッシャーを使用できるまでには4ステップほど承認が必要ですべて完了するまでにおよそ1か月ほどかかりますので、申請する際は早めに作業を行っておくことが重要です。
申請の中で、アプリの公開範囲やアプリの画像設定なども可能ですので、環境にあった設定を行えます。

まとめ

Experience Cloudサイトを使用する際には、ユーザーのライセンスの違いやサイトの仕様などによる制限があることを考慮する必要があります。
独自のサイトをカスタマイズして作成でき、外部ユーザーの受け入れや、パートナーの方を管理しやすくなることなどさまざまな良い機能でもあるので、使用する際にできることできないことをまとめたうえで、導入するのが重要になります。

Experience Cloudサイトはとても便利でカスタマイズも柔軟にできるため、実際に設定してみてください!

最後までご覧いただきありがとうございました。

参考